2022.02.6
【AGA治療薬】ミノキシジル(外用薬・内服薬)の効果と副作用
薄毛は男性の深刻な悩みの一つで、薄毛に悩む方は全国に約1,200万人もいると言われています。薄毛の主な原因であるAGA(男性型脱毛症)には効果が認められた治療薬がいくつかあり、その中の一つが「ミノキシジル」です。
そんなAGA治療薬の「ミノキシジル」について、この記事では効果や副作用など詳しく解説していきます。
ミノキシジルは発毛促進薬
ミノキシジルはAGA(男性型脱毛症)の代表的な治療薬の一つで、血行を促進する効果や、発毛因子を増加させる効果が期待できます。
元々ミノキシジルは降圧剤として1979年に開発された薬で、血管を拡張して血圧を下げる効果があります。開発された当時は降圧剤として使用されていたのですが、副作用として多毛症が認められたことから、再び発毛剤としての研究が進められました。その結果、ミノキシジルによる発毛効果が認められ、代表的なAGA治療薬の一つとなったのです。
ミノキシジル配合のAGA治療薬には、内服薬のタブレット型と外用薬のローションタイプがあります。血液から有効成分を吸収できる体服薬の方が発毛効果は高いとされていますが、後に紹介する副作用のリスクから2022年時点で内服薬の国内承認は出ていません。服用する場合はリスクを理解し、専門医による管理の元で行うようにしましょう。外用薬は内服薬に比べて安全性が高く、国内でも承認されています。
ミノキシジルの効果
ミノキシジルは代表的なAGA治療薬として、主に以下3つの効果によって発毛が促進されることが知られています。
・血流促進
・毛母細胞の活性
・育毛・脱毛抑制
■血流促進
ミノキシジルは血管を拡張して血流を良くする効果があります。そのため、ミノキシジルを内服または塗布すると、頭皮の血管が拡張されてより多くの栄養が髪の毛へ届きやすくなり、髪の毛が育ちやすくなります。
また、頭皮の血管は栄養の運搬だけでなく、老廃物の排出にも関係しています。そのため、血流を促進することで、栄養と老廃物の代謝が活性化して毛髪の健康に良い栄養を与えるのです。
■毛母細胞の活性
ミノキシジルは髪の毛を作り出す「毛母細胞」を活性化する効果があります。「毛母細胞」とは、栄養素や酸素を受け取って細胞分裂を行い、実際に毛髪になる細胞を指します。
また、ミノキシジルは「毛母細胞」に栄養や指令を送る「毛乳頭細胞」を増殖させる効果も併せ持つと言われています。これらの効果により、発毛を促すことに加え、髪の毛の寿命(ヘアサイクル)を伸ばしたりできるのです。
■育毛・脱毛抑制
ミノキシジルは髪の毛を作り出す「毛母細胞」の死滅(アポトーシス)を防ぐ効果があります。「毛母細胞」が死滅すると、毛髪の成長期が終了して退行期へと移行してしまいます。
特に、AGAの方は男性ホルモンによって、通常よりも早期に毛髪の成長期が終了してしまうので、ミノキシジルによって毛髪の成長期を延長させることは、毛髪サイクルを正常に保つために効果的です。
ミノキシジルの効果はいつから?
ミノキシジルの効果をいつから感じるかは個人差がありますが、少なくとも4~6ヶ月程度の継続服用が必要だと言われています。
これは乱れた髪の毛の成長サイクルを正常に戻すために必要な期間であり、ミノキシジル(外用薬)の継続使用による高い発毛効果は日本人男性を対象にした研究でも示されています。
例えば、1%および5%ミノキシジル液を使用した300名の日本人男性を対象として、24週間の経過を観察および比較した試験では、脱毛部1cm^2内の非軟毛数(太く硬い髪の毛)の増加が確認されています。また、1%ミノキシジル液を使用した群は平均21.2本増加したのに対し、5%ミノキシジル液を使用した群は26.4本も増加しており、濃度による優位性も示されています。
ミノキシジルの副作用8つ
ミノキシジルを使用することで副作用が発現する可能性があります。ミノキシジルの主な副作用は以下の通りです。
・皮膚炎
・浮腫み
・頭痛・めまい
・動悸・息切れ
・多毛症
・初期脱毛
・心疾患
・肝機能障害
ミノキシジル外用薬の副作用は適用部の発疹や皮膚炎、めまいや頭痛などが多く、重篤な副作用が発生する可能性は極めて低い安全な治療薬と言えます。
一方で、ミノキシジル内服薬は国内で承認されていないことも分かるように、発生確立は低いながらも重篤な副作用に繋がる可能性があります。内服薬を使用する場合は、この章で解説する副作用について理解した上で医師の診療のもとで始めるようにしましょう。
■皮膚炎
ミノキシジル外用薬を使用した場合、使用箇所に痒みや赤みが出たり、乾燥で皮膚が剥がれるなどの皮膚トラブルが起こる可能性があります。
肌に合わず皮膚トラブルが起こった場合には、使用を中断し、医師に相談するようにしましょう。
■浮腫み
ミノキシジルを使用した場合、体が血液を過剰に増やしてしまって体に浮腫みが生じる可能性があります。ミノキシジルの効果によって血管が拡張され、体の中枢から末梢へ血液が持っていかれることで、体が血液不足だと勘違いしてしまうことが原因です。
一過性の症状であることが多いため過剰に心配する必要はありませんが、稀に心肺機能の低下が原因で浮腫んでいる可能性もあります。 そのため、体に違和感を感じた場合は専門医を受診したほうが良いでしょう。
■頭痛・めまい
ミノキシジルを使用した場合、血管の拡張効果によって頭痛やめまいが起こる可能性があります。頭の毛細血管に多くの血流が流れ込むことで、拍動性の血管性頭痛が引き起こされると考えられます。また、めまいは、末梢血管に血液を持っていかれて中枢血管の血圧が低下することで引き起こされると考えられます。
ミノキシジルを使用した後からこのような症状が見られる場合は、医師に相談した方が良いでしょう。
■動悸・息切れ
ミノキシジルを使用した場合、血管が拡張されて血流が良くなることで動悸や息切れが起こる可能性があります。運動直後のように心臓がドキドキしてしまうのです。
元々ミノキシジルは降圧剤として使用されており、循環器系に作用する薬のため、以下に当てはまる方は服用できるか医師と相談しましょう。
・血圧が不安定な方
・心臓疾患がある方
・低血圧の方
・降圧剤を服用中の方
など
■多毛症
ミノキシジルを使用した場合、毛髪に限らず体毛も濃くなる「多毛症」となる可能性があります。ミノキシジルの発毛効果を毛髪にだけ効かせることはできないのです。発毛効果を発揮している証拠なので、そこまで深刻に捉える必要はないでしょう。
■初期脱毛
ミノキシジルを使用した場合、治療初期に髪の毛が抜ける「初期脱毛」が起こる可能性があります。初期脱毛とは、AGAの治療初期(治療開始2〜8週間程度)によく見られる症状で、AGAによってヘアサイクルが乱れた弱い髪の毛が抜けるのです。
初期脱毛はミノキシジルの発毛効果が効いている証拠であり、初期脱毛によって抜けた部分から新たに健康な髪の毛が生えてきます。そのため、初期脱毛が起こったとしても治療は継続するようにしましょう。
■心疾患
ミノキシジルを使用した場合、極稀に狭心症などの心疾患になる可能性があります。狭心症とは、心臓の冠動脈(心臓の表面を覆う血管)が狭くなって、十分な酸素や栄養が行き届かなくなる病気です。報告数は非常に少なく、発生率は極めて低いと言えます。
また、狭心症だけでなく心筋梗塞や心不全などの副作用も少数ながら報告されています。ただし、ミノキシジルと心疾患との因果関係は明らかになっていません。
■肝機能障害
ミノキシジル内服薬を使用した場合、薬を代謝する肝臓に負担がかかって肝機能障害となる可能性があります。ミノキシジルによる肝機能障害の副作用は極めて稀ですが、重篤化すると肝不全を引き起こす危険性があるので注意が必要です。
肝臓は「沈黙の臓器」と言われるように、自覚症状なく病状が進むため、ミノキシジルを服用する際は定期的に血液検査を行いましょう。常に肝臓の状態を確認する必要があるのです。
ミノキシジル服用上の注意点3つ
ミノキシジルは医薬品のため、用法用量を守って服用しなければなりません。ミノキシジルの服用にはいくつか注意点があります。
■併用できない薬に注意
ミノキシジルは血管に作用する薬であり、併用禁忌の薬がいくつか存在します。例えば、高血圧の治療で降圧剤をすでに服用している方は、ミノキシジルを併用することで必要以上に血圧が下がってしまう恐れがあるのです。
その他、高血圧以外にも持病で服用している薬がある場合や心臓や肺の疾患がある方は、自分で判断せずに医師に相談するようにしましょう。
■個人輸入による服用は注意
ミノキシジルを個人輸入して服用する場合は注意が必要です。法律上は個人による輸入も可能ではありますが、非合法サイトによる模造品を掴まされる可能性があります。また、個人輸入による服用は、医師の診察が伴わないため健康被害に合う可能性もあるため、注意しましょう。
■服用前のアルコールに注意
アルコールにも血管拡張作用があるため、ミノキシジルの服用前にアルコールを摂取すると、血圧が下がりすぎる危険性があります。ミノキシジル内服薬を服用する7時間前を目安にアルコールの摂取は控えましょう。
ミノキシジルの効果・副作用まとめ
この記事では、AGA治療薬「ミノキシジル」の効果と副作用について詳しく解説しました。ミノキシジルは高い治療効果が認められていますが、内服薬は僅かながら重篤な副作用が発症する可能性があります。使用する場合は、専門医の元で治療を行うべきでしょう。
監修医師
TOSHIYA ISHIYAMA
石山 敏也
2014年順天堂大学医学部卒業後、順天堂大学医学部附属順天堂医院に勤務。19年より、新島診療所村医に就任。20年スキンシアクリニック副院長に就任。日本内科学会認定医産業医
参考文献
(1)Tsuboi R, Arano O, Nishikawa T, Yamada H, Katsuoka K: Randomized clinical trial comparing 5% and 1% topi- cal minoxidil for the treatment of androgenetic alopecia in Japanese men, JDermatol, 2009;36:437―446(.レベル II)